医療法人の分院長・管理者と理事の関係|本院との兼務・役員変更・届出

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医療法人の分院長・管理者と理事の関係|本院との兼務・役員変更・届出

医療法人が分院を開設する際には、

「分院長に就任する先生は、医療法人の理事にも就任するのか」

「本院の院長が、分院の管理者を兼務できるのか」

「分院長が交代した場合、どのような手続きが必要になるのか」

といった疑問が生じることがあります。

一般に「分院長」「院長」と呼ばれる立場と、医療法上の「管理者」、医療法人の役員である「理事」は、それぞれ意味が異なります。

特に医療法人が開設する診療所では、原則として各診療所の管理者を医療法人の理事に加える必要があります。

そのため、分院長を決める際には、院内での役職だけでなく、管理者への就任、理事への選任、行政への届出まで一つの流れとして検討することが大切です。

今回は、医療法人の分院長・管理者・理事の違いと、本院との兼務、役員変更、管理者変更に関する手続きについてご説明します。

※本記事では、主に社団医療法人が診療所を開設する場合を想定しています。法人の形態、所在地、定款、開設する施設の内容によって必要な手続きは異なります。

「分院長」は院内で使われる呼称です

「分院長」は、分院の責任者を表す呼称として一般的に使われています。

しかし、「分院長」という名称自体が、医療法上の役職として定められているわけではありません。

一方、医療法上の「管理者」は、その病院または診療所の管理を担う者として、開設許可申請や開設届などに氏名を記載する正式な立場です。

例えば、院内では「分院長」と呼ばれていても、医療法上の管理者として届け出ていなければ、その方が当然に管理者になるわけではありません。

分院を開設するときは、誰を院内の責任者とするかだけではなく、誰を医療法上の管理者として選任するかを明確にする必要があります。

管理者は医師・歯科医師である必要があります

医療法人が診療所を開設する場合、その診療所を管理する医師または歯科医師を定めなければなりません。

医科診療所の場合は、原則として臨床研修等を修了した医師が管理者となり、歯科診療所の場合は、原則として臨床研修等を修了した歯科医師が管理者となります。

管理者は単に名前を届け出るだけの立場ではありません。

診療所における医療の提供、医療安全、従業者の監督、施設や設備の管理など、医療機関の運営について重要な責任を担います。

そのため、名義だけを借りて管理者に就任してもらうことは適切ではありません。実際にその診療所を管理できる勤務体制や権限を整える必要があります。

医療法人では管理者を原則として理事に加えます

医療法では、医療法人が開設する病院、診療所、介護老人保健施設または介護医療院の管理者を、原則として医療法人の理事に加えることとされています。

したがって、医療法人が分院を開設し、その分院に新しい管理者を置く場合には、通常、その管理者を医療法人の理事として選任する手続きも必要になります。

これは、医療現場において実質的な責任を負う管理者の意向を、医療法人の運営に反映させるためです。

ただし、医療法人が病院や診療所などを2か所以上開設している場合には、都道府県知事の認可を受けることで、管理者の一部を理事に加えない取扱いが認められることがあります。

この例外は、自動的に適用されるものではありません。

分院の管理者を理事に加えない方針とする場合は、その理由や法人の運営体制を整理し、事前に所管行政庁へ相談する必要があります。

管理者と理事では役割が異なります

管理者と理事は、同じ方が兼ねることが多いものの、それぞれ異なる役割を持っています。

管理者は、主に一つの病院や診療所について、医療法上の管理責任を担います。

一方、理事は、医療法人全体の業務執行や意思決定に関わる役員です。

分院の管理者が理事に就任した場合、その方は分院の診療や運営だけではなく、医療法人全体の運営にも関わることになります。

なお、理事に就任したからといって、当然に医療法人を代表できるわけではありません。

医療法人を代表するのは原則として理事長であり、分院の管理者である理事が、単独で法人名義の契約を締結できるとは限りません。

分院長へどこまでの権限を与えるのかについては、法人内部の決裁ルールや職務権限規程などでも整理しておくことが大切です。

本院と分院の管理者を兼務できるとは限りません

分院開設の際に特に注意したいのが、本院の管理者による分院管理者の兼務です。

医療法では、病院や診療所を管理する医師・歯科医師は、一定の例外として都道府県知事等の許可を受けた場合を除き、他の病院や診療所を管理しないこととされています。

したがって、同じ医療法人が運営する本院と分院であっても、一人の医師・歯科医師が当然に両方の管理者を兼務できるわけではありません。

「開院当初だけ本院の院長が分院も管理する」

「分院長候補が決まるまで、一時的に理事長が兼務する」

といった場合でも、事前に管轄行政庁へ確認する必要があります。

兼務が認められるかどうかは、施設の種類、所在地、診療時間、勤務体制、地域医療上の事情などを踏まえて判断されます。

分院開設の計画段階で管理者候補が決まっていない場合は、物件や内装だけを先に進めるのではなく、管理者の確保と行政への相談を並行して進めることが重要です。

分院の管理者を理事に選任する手続き

社団医療法人では、原則として社員総会の決議によって理事を選任します。

分院の管理者候補を新たに理事へ選任する場合は、現在の定款を確認したうえで、社員総会を開催し、理事選任の決議を行います。

主に次のような書類を準備します。

  • 社員総会議事録
  • 役員就任承諾書
  • 新たに就任する理事の履歴書
  • その他、所管行政庁が求める書類

理事の人数が定款に定める員数の範囲内であれば、理事を一人追加するためだけに定款変更が必要になるとは限りません。

一方、理事の定数を変更する必要がある場合には、定款変更認可申請が必要となる可能性があります。

分院開設に伴う定款変更認可申請と、分院管理者の理事選任をどの時点で行うかについて、あらかじめ全体のスケジュールを整理しておくと安心です。

理事の就任後は役員変更届を提出します

愛知県では、理事や監事の辞任・就任があった場合、変更後遅滞なく愛知県知事へ役員変更届を提出する必要があります。

重任の場合も届出が必要です。

分院の管理者候補が新たに理事へ就任する場合には、社員総会での選任だけで終わらず、役員変更届まで行います。

なお、通常の理事の就任・退任は、原則として法人登記の対象ではありません。

一方、理事長が変更した場合には、代表権を有する者の変更として変更登記が必要となり、登記完了後には登記事項変更登記完了届も提出します。

登記申請の代理は司法書士の業務となるため、理事長の変更を伴う場合には、行政書士と司法書士が連携しながら手続きを進めます。

管理者が交代すると複数の手続きが生じます

分院開設後に分院長・管理者が交代する場合は、医療機関側と医療法人側の両方で手続きが必要になる可能性があります。

主に確認する手続きは次のとおりです。

  • 診療所の管理者変更に関する届出
  • 前任管理者の理事退任
  • 新任管理者の理事選任
  • 医療法人の役員変更届
  • 保険医療機関に関する変更届
  • 医療情報ネット等の掲載情報の変更
  • 院内掲示、ホームページ等の表示変更

名古屋市では、診療所の開設許可・届出事項に変更が生じた場合、原則として変更後10日以内に変更届を提出する手続きが案内されています。

また、医療法人の管理者として理事に就任していた方は、管理者の職を退いたときに、その管理者としての理事の職も失うこととされています。

ただし、管理者を退任した方を、改めて通常の理事として選任することが妨げられるわけではありません。

その方に引き続き法人運営へ関わってもらう場合には、定款に従って改めて理事として選任するなど、適切な手続きを行う必要があります。

分院長との契約内容も整理しておきましょう

分院長候補の先生を採用する場合は、給与や勤務時間などの労働条件だけでなく、管理者および理事としての立場も整理する必要があります。

例えば、次のような事項を事前に確認しておくと安心です。

  • 分院長への就任日
  • 医療法上の管理者への就任日
  • 医療法人の理事への就任日
  • 診療日、勤務時間、休診時の対応
  • スタッフの採用や指導に関する権限
  • 設備購入や経費支出に関する決裁権限
  • 医療事故や苦情が発生した場合の報告体制
  • 本院、理事長、理事会への報告方法
  • 管理者または理事を退任する場合の手続き
  • 退職後の患者情報、診療記録、秘密保持の取扱い

分院長、管理者、理事、勤務医としての立場が重なる場合、それぞれの責任や権限が曖昧になりやすいため、雇用契約書、役員就任承諾書、職務権限規程などを組み合わせて整理します。

労働条件や社会保険については社会保険労務士、登記については司法書士など、必要に応じて各専門家へ確認します。

分院開設前に確認したいポイント

医療法人が分院を開設する際には、管理者について少なくとも次の事項を確認します。

  • 分院の管理者候補が決まっているか
  • 管理者として必要な資格・研修要件を満たしているか
  • 実際に分院を管理できる勤務体制になっているか
  • 本院その他の医療機関の管理者を兼ねていないか
  • 兼務を予定する場合、許可の対象となるか
  • 医療法人の理事へ選任する必要があるか
  • 定款に定める理事の員数に問題がないか
  • 社員総会をいつ開催するか
  • 役員変更届や診療所関係の届出をいつ行うか
  • 管理者退任時の取扱いをどのように定めるか

管理者が決まらなければ、診療所の開設手続きを予定どおり進められない可能性があります。

分院長候補の採用、理事への選任、定款変更、診療所開設許可、保険医療機関の指定を、それぞれ別の手続きとして考えるのではなく、開院日から逆算して一つの工程表にまとめることが大切です。

まとめ

医療法人が分院を開設する場合、院内で「分院長」と呼ばれる方が、医療法上の管理者になるとは限りません。

誰を正式な管理者とするのかを明確にし、その方が実際に分院を管理できる体制を整える必要があります。

また、医療法人が開設する診療所の管理者は、原則として医療法人の理事に加えなければなりません。

本院と分院の管理者兼務についても、同じ医療法人だから自由に兼務できるわけではなく、例外的な許可の対象となるかを事前に確認する必要があります。

スピカ行政書士オフィスでは、医科・歯科の医療法人について、分院開設に伴う定款変更認可、管理者・理事の体制整理、役員変更届、診療所開設に関する行政手続き、開院までのスケジュール作成をサポートしております。

登記、労務、税務などが関係する場合には、司法書士、社会保険労務士、税理士等とも連携し、必要な手続きを整理して進めてまいります。

「分院長候補は決まっているが、理事にする必要があるのか分からない」

「本院の院長が、分院の管理者を兼務できるか確認したい」

「分院長の交代に伴う手続きをまとめて相談したい」

という段階からでもご相談いただけます。

新しい医療の場をつくる先生方の想いを、安心して続けられる形に。

どうぞお気軽にスピカ行政書士オフィスへご相談ください。

※医療法人・医療機関に関する手続き、必要書類、審査の取扱いは、所在地、法人の定款、施設の種類、管理者の勤務状況等によって異なります。実際の手続きにあたっては、管轄行政庁・保健所等への事前確認が必要です。

参考:

厚生労働省「医療法」

厚生労働省「医療法人の機関について」

愛知県「医療法人の役員変更の手続き」

名古屋市「診療所開設許可(届出)事項一部変更届」

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