
こんにちは。スピカ行政書士オフィスの矢口です。
歯科医院・歯科医療法人の設備投資や補助金申請に関するご相談をお受けする中で、
「導入したい医療機器に使える補助金はありますか」
「複数の補助金のうち、どの制度を選べばよいですか」
といったご質問をいただくことがあります。
歯科医院では、診療の質の向上やスタッフの負担軽減、業務の効率化を目的として、CT、口腔内スキャナー、CAD/CAM関連設備、診療データ管理システムなどの導入を検討する場面があります。
こうした設備投資に活用できる可能性がある制度として、現在注目されているのが、次の2つの補助金です。
- 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金
- 中小企業省力化投資補助金(一般型)
ただし、2つの補助金では、制度の目的、補助対象者、求められる事業計画が異なります。
また、個人で開設している歯科医院と歯科医療法人とでは、申請できる制度が異なるため注意が必要です。
今回は、2つの補助金の違いを比較しながら、歯科医院・歯科医療法人が設備投資を検討する際に、どのような点を確認すればよいのかをご説明します。
※本記事は、2026年10月13日現在の公募要領・公式情報に基づいて作成しています。
結論|個人開設の歯科医院と歯科医療法人では選べる制度が異なります
最初に、2つの補助金の対象者を整理します。
| 開設形態 | 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 | 中小企業省力化投資補助金(一般型) |
|---|---|---|
| 個人開設の歯科医院 | 対象となる可能性があります | 対象となる可能性があります |
| 歯科医業を営む医療法人 | 対象外です | 一定の要件を満たす場合は対象となる可能性があります |
「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」では、医療法人は補助対象者に含まれていません。
そのため、歯科医療法人が申請することはできませんが、個人事業主として歯科医院を開設している場合は、他の要件を満たすことで対象となる可能性があります。
一方、「中小企業省力化投資補助金(一般型)」では、一定の要件を満たす歯科医業を営む医療法人が補助対象者として明記されています。
つまり、設備の種類だけで補助金を選ぶのではなく、まずは医院の開設形態を確認する必要があります。
2つの補助金は目的が異なります
2つの補助金の大きな違いは、設備投資によって何を実現するのかという点です。
| 比較項目 | 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 | 中小企業省力化投資補助金(一般型) |
|---|---|---|
| 主な目的 | 新製品・新サービスの開発、新市場への進出 | 人手不足の解消、業務プロセスの省力化 |
| 歯科医療法人 | 対象外 | 一定の要件を満たす場合は対象となる可能性あり |
| 個人開設の歯科医院 | 対象となる可能性あり | 対象となる可能性あり |
| 重視される内容 | 新規性、市場性、付加価値、事業化の可能性 | 削減時間、省力化効果、投資回収、労働生産性 |
| 単なる設備更新 | 対象になりにくい | 対象になりにくい |
| 適している取組 | 新たなサービスや市場を開拓する投資 | 現在の業務を省力化する投資 |
同じ医療機器を導入する場合でも、導入の目的によって検討すべき補助金が異なります。
例えば、口腔内スキャナーを導入するとしても、
- 新しい診療サービスを開発し、新たな顧客層へ提供する
- 印象採得やデータ管理にかかる作業時間を削減する
のでは、事業計画の内容が変わります。
補助金申請では、「何を購入するのか」だけでなく、「設備を導入して、どのような事業上の変化を生み出すのか」が重要になります。
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金とは
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金は、中小企業や小規模事業者等による、新製品・新サービスの開発、新市場への進出、海外展開などを支援する制度です。
公募枠は、主に次の3つに分かれています。
- 革新的新製品・サービス枠
- 新事業進出枠
- グローバル枠
歯科医院が国内で設備投資を行う場合には、取組内容に応じて「革新的新製品・サービス枠」または「新事業進出枠」を検討することになります。
ただし、単に高性能な医療機器を導入するだけでは、補助金の目的を満たすとは限りません。
設備の導入を通じて、これまで行っていなかった新しいサービスを提供することや、新たな市場・顧客層へ進出することなどを、具体的な事業計画として説明する必要があります。
個人開設の歯科医院は対象となる可能性があります
個人事業主として歯科医院を開設している場合は、中小企業者等として申請対象となる可能性があります。
ただし、応募時点で常時使用する従業員がいない事業者など、対象外となる場合もあります。
従業員数、過去の補助金利用状況、事業実施体制などを含め、公募要領の要件を確認する必要があります。
歯科医療法人は対象外です
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金では、医療法人は補助対象者に含まれていません。
歯科医業を営む医療法人であっても、この補助金へ申請することはできないため注意が必要です。
個人開設の歯科医院から医療法人へ移行する予定がある場合は、申請時点だけでなく、補助事業の実施期間や事業完了後の組織変更についても確認が必要です。
歯科医院ではどのような取組が考えられる?
個人開設の歯科医院が、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金を検討する場合には、例えば次のような視点が考えられます。
- 新しい診療サービスの開発
- 新たな患者層や市場を対象とする事業への進出
- デジタル技術を活用した新しいサービス提供方法の構築
- 外部事業者との連携による新事業の開始
- 既存の診療とは異なる収益の柱となる事業の展開
ただし、自由診療メニューを追加すれば必ず対象になるというものではありません。
既存事業との違い、市場のニーズ、競合との差別化、売上計画、実施体制、投資効果などを具体的に説明する必要があります。
設備の購入を先に考えるのではなく、まずは「どのような新しい事業を行うのか」を整理することが大切です。
中小企業省力化投資補助金(一般型)とは
中小企業省力化投資補助金(一般型)は、人手不足に悩む中小企業等が、デジタル技術などを活用した設備やシステムを導入し、生産・業務プロセスやサービス提供方法を省力化する取組を支援する制度です。
設備を新しくすること自体が目的ではなく、設備導入によって業務時間を削減し、労働生産性や付加価値を高めることが求められます。
一般型では、事業者ごとの業務内容や課題に合わせた設備導入・システム構築が対象となります。
歯科医療法人も対象となる可能性があります
中小企業省力化投資補助金(一般型)では、一定の要件を満たす「歯科医業を営む医療法人」が補助対象者として明記されています。
主な要件として、次のようなものがあります。
- 医療法に基づく都道府県知事の認可を受けて設立された医療法人であること
- 従業員数が300人以下であること
個人で歯科医院を開設している場合も、個人事業主として対象となる可能性があります。
ただし、応募時点で従業員がいない場合などは対象外となるため、医院の組織形態や従業員数を確認する必要があります。
50万円以上の設備投資が必要です
一般型では、「機械装置・システム構築費」が必須の経費とされています。
申請には、単価50万円(税抜き)以上の機械装置等への設備投資を、少なくとも一つ含める必要があります。
主な対象経費は次のとおりです。
- 機械装置・システム構築費
- 運搬費
- 技術導入費
- 知的財産権等関連経費
- 外注費
- 専門家経費
- クラウドサービス利用費
ただし、対象経費に該当する名称の設備であっても、必ず補助対象になるわけではありません。
医院の人手不足や業務上の課題と、導入設備による省力化効果との関係が審査されます。
歯科医院の省力化では何を説明する?
歯科医院における設備投資としては、次のようなものが考えられます。
- CTなどの画像診断装置
- 口腔内スキャナー
- CAD/CAM関連設備
- 診療データの管理システム
- 予約・受付業務を効率化するシステム
- 患者説明や情報共有を効率化するシステム
- 会計や精算業務を効率化する設備
ただし、これらが一律に補助対象となるわけではありません。
申請では、例えば次のような内容を整理します。
- 現在、どの業務にどの程度の時間と人員がかかっているか
- 設備導入後、業務の流れがどのように変わるか
- 1件当たり、1日当たり、1か月当たりの作業時間をどの程度削減できるか
- 省力化によって生まれた時間を何に活用するか
- 患者対応や診療体制にどのような効果が生じるか
- 医院全体の労働生産性や付加価値がどのように向上するか
- 設備投資を何年程度で回収できるか
設備導入前と導入後の業務フローを比較し、削減時間や処理件数などを数値で示すことが重要です。
どちらの補助金を選べばよい?
補助金を選ぶ際は、設備の名称ではなく、設備投資の目的から考えます。
新しいサービスや市場への進出が目的の場合
個人開設の歯科医院が、これまで行っていなかった新しいサービスを開発し、新しい市場や顧客層への進出を目指す場合は、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金を検討します。
ただし、新規性や市場性、事業化の可能性を説明する必要があります。
人手不足や業務負担の軽減が目的の場合
受付、診療、技工、画像管理、患者説明などの業務時間を削減し、限られたスタッフで診療体制を維持・向上させたい場合は、中小企業省力化投資補助金(一般型)を検討します。
この場合は、省力化の対象となる業務、現在の作業時間、導入後の削減時間などを明確にすることが大切です。
歯科医療法人の場合
歯科医療法人は、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の対象外です。
そのため、設備導入による省力化を検討している場合は、中小企業省力化投資補助金(一般型)の対象となるかを確認します。
なお、医科の医療法人については対象となる制度が異なるため、医療機関向けの支援制度やIT導入・業務効率化に関する補助事業を個別に確認する必要があります。
単なる買替えでは対象になりにくい点に注意
いずれの補助金も、古くなった設備を新しい設備へ交換するだけでは、補助対象としての必要性や効果を十分に説明できない可能性があります。
例えば、「現在使用している機器が古くなったから買い替えたい」という理由だけでは、補助事業としての目的が伝わりにくくなります。
申請にあたっては、
- 現在どのような経営課題があるのか
- 新しい設備によって何ができるようになるのか
- 業務やサービス提供方法がどのように変わるのか
- 売上、付加価値、労働生産性にどのような効果があるのか
を具体的に整理する必要があります。
補助金を利用する前に確認したい7つのポイント
1.医院の開設形態を確認する
個人事業主なのか、医療法人なのかによって、申請できる制度が異なります。
特に新事業進出・ものづくり商業サービス補助金は、歯科医療法人が対象外である点に注意が必要です。
2.設備より先に事業目的を整理する
「この設備に使える補助金はありますか」と考える前に、設備によって解決したい課題や実現したい事業を整理します。
同じ設備でも、使用目的や事業計画によって判断が異なります。
3.現在の業務時間を計測する
省力化投資補助金では、導入前後の作業時間を比較することが重要です。
受付、診療準備、撮影、データ入力、技工、患者説明など、対象となる業務に現在どの程度の時間がかかっているかを確認しておきましょう。
4.交付決定前に契約・発注しない
補助金は、原則として交付決定後に契約・発注した経費が対象となります。
採択された場合でも、交付決定前に設備を発注すると補助対象外になる可能性があります。
設備業者との商談を進める際は、契約や発注の時期を明確にしておく必要があります。
5.補助金は原則として後払い
補助金は、設備を購入する前に受け取れるものではありません。
設備代金等をいったん支払い、事業完了後の実績報告や確定検査を経て支給されるため、つなぎ資金を含めた資金計画が必要です。
6.GビズIDプライムを早めに取得する
補助金の電子申請には、GビズIDプライムが必要です。
取得に時間がかかる場合があるため、補助金の利用を検討し始めた段階で準備しておくことをおすすめします。
7.公募スケジュールを確認する
2026年10月13日現在、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の第1回公募は、2026年10月30日18時が申請締切とされています。
中小企業省力化投資補助金(一般型)の第8回公募は、2026年10月16日17時が申請締切です。第9回以降の詳しい日程は、今後公表される予定です。
公募内容や日程は変更される場合があるため、実際の申請時には必ず最新の公式情報をご確認ください。
よくあるご質問
医療機器であれば補助対象になりますか?
医療機器であることだけを理由に補助対象となるわけではありません。
設備の使用目的、事業計画との関係、新規性または省力化効果、対象経費の要件などを確認して判断されます。
メーカーから「補助金が使える」と言われましたが、申請できますか?
設備メーカーや販売業者から補助金を案内された場合でも、必ず採択されるという意味ではありません。
医院の開設形態や従業員数、導入目的、事業計画、公募要領の要件を確認する必要があります。
歯科医療法人は、ものづくり補助金に申請できますか?
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金では、医療法人は補助対象者に含まれていません。
歯科医療法人の場合は、中小企業省力化投資補助金(一般型)や医療機関向けの支援制度などを確認します。
複数の補助金へ同時に申請できますか?
制度上、複数の補助金へ申請できる場合はありますが、同じ設備や同じ経費について国等の補助を重複して受けることはできません。
また、過去に採択された補助事業が完了していない場合など、申請が制限されることもあります。各補助金の公募要領を個別に確認する必要があります。
申請書は専門家に任せればよいですか?
補助金の事業計画は、申請者自身が事業内容を理解し、主体となって作成することが基本です。
専門家の支援を受ける場合も、経営課題、投資の目的、数値計画、将来の事業展開について、申請者自身が説明できる状態にしておくことが大切です。
まとめ
歯科医院の設備投資に活用できる可能性がある制度として、「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」と「中小企業省力化投資補助金(一般型)」があります。
ただし、2つの補助金は目的と対象者が異なります。
個人開設の歯科医院は、取組内容によって両方の制度を検討できる可能性があります。
一方、歯科医療法人は、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の対象外ですが、一定の要件を満たす場合には、中小企業省力化投資補助金(一般型)の対象となる可能性があります。
補助金を選ぶ際は、設備の名称から判断するのではなく、
- 新しいサービスや市場への進出を目指すのか
- 人手不足や業務負担を解消したいのか
- 設備導入によってどのような成果を生み出すのか
という事業の目的から考えることが大切です。
スピカ行政書士オフィスでは、経験豊富な中小企業診断士等と連携し、歯科医院・歯科医療法人の設備投資について、補助金制度の選定、経営課題の整理、省力化効果の数値化、事業計画の検討、申請手続きをサポートしております。
「導入したい設備は決まっているけれど、どの補助金が合うか分からない」
「法人化する予定があり、申請できる制度を確認したい」
「設備業者から補助金を案内されたので、対象になるか確認したい」
という段階からでもご相談いただけます。
設備投資と補助金の活用をご検討の先生は、どうぞお気軽にスピカ行政書士オフィスへご相談ください。
※補助金の採択や交付を保証するものではありません。補助対象者、対象経費、公募期間等は変更される場合がありますので、申請時点の最新の公募要領をご確認ください。
参考

