
医療法人は、設立の認可を受け、登記を終えれば手続きが完了するわけではありません。
設立後も、毎年度の決算に伴う届出や、役員変更、定款変更など、医療法に基づくさまざまな手続きが必要になります。
その中でも、すべての医療法人に毎年度必要となるのが、「事業報告書等(決算届)」の提出です。
税理士に決算や税務申告を依頼していても、それとは別に、医療法上の行政手続きが必要となる点には注意が必要です。
医療法人は毎年度「事業報告書等」の提出が必要です
医療法人は、毎会計年度の終了後、事業報告書や財務諸表などの決算関係書類を、主たる事務所の所在地を管轄する都道府県知事へ届け出なければなりません。
一般に「事業報告書」と呼ばれることがありますが、実際には事業報告書だけではなく、貸借対照表や損益計算書、財産目録、監事の監査報告書などを一式で提出します。
愛知県では、これらをまとめて「事業報告書等(決算届)」として取り扱っています。
提出期限は決算終了後3か月以内です
事業報告書等の提出期限は、毎会計年度の終了後3か月以内です。
例えば、3月31日が決算日の医療法人であれば、原則として6月30日までに届け出る必要があります。
法人税の申告期限とは異なるため、税務申告が終わって安心していたところ、医療法上の届出を忘れていたということがないよう注意が必要です。
また、事業報告書等の作成には、決算書類のほか、監事による監査や法人の運営状況に関する情報の整理も必要となります。決算後に慌てないよう、あらかじめ提出までの流れを確認しておくと安心です。
愛知県で提出する主な書類
一般的な医療法人が愛知県へ提出する主な書類は、次のとおりです。
・決算届
・事業報告書
・財産目録
・貸借対照表
・損益計算書
・監事の監査報告書
・関係事業者との取引に関する報告書(一定の基準に該当する場合)
診療所のみを開設する医療法人と、病院・介護老人保健施設・介護医療院を開設する医療法人では、使用する様式が一部異なります。
また、愛知県では、決算届と併せて、医療法人の運営状況を確認するための「チェックシート」の提出も求められています。
チェック項目には、役員や関連企業などへの貸付けの有無、土地・建物の賃貸借契約、定款に定められていない業務からの収益、債務超過の有無などが含まれます。
すべての項目が「はい」の場合、勘定科目内訳書の提出は不要とされています。一つでも「いいえ」に該当する場合は、改善計画を記載したうえで、勘定科目内訳書も提出します。
病院・診療所ごとの「経営情報等」の報告も必要です
現在は、従来の事業報告書等に加えて、医療法人が開設する病院または診療所ごとの「経営情報等」も報告する必要があります。
これは、令和5年8月1日に施行された改正医療法によって設けられた制度で、令和5年8月1日以降に決算期末を迎える、原則としてすべての医療法人が対象です。
法人全体について提出する事業報告書等とは別に、病院・診療所ごとの収益や費用などを所定の様式に記載し、事業報告書等と併せて提出します。
なお、事業報告書等は閲覧の対象となりますが、病院・診療所ごとの経営情報等は、医療法上の閲覧対象とはされていません。
愛知県ではMCDBまたは紙で提出します
愛知県における事業報告書等の提出方法は、次の2つです。
1.医療法人経営情報データベースシステム(MCDB)による提出
2.紙媒体による提出
MCDBとは、福祉医療機構がWAM NET上で運用しているシステムです。従来のG-MISに代わり、令和7年4月以降、事業報告書等や経営情報等のオンライン提出に使用されています。
MCDBを利用する場合は、事前に利用申請を行い、医療法人専用のIDを取得する必要があります。
また、オンライン提出では、愛知県のホームページに掲載されている紙提出用の様式ではなく、MCDBへログイン後にダウンロードできる専用様式を使用します。
MCDBで提出した場合は、同じ書類を紙で重ねて提出する必要はありません。
税務申告とは別の行政手続きです
医療法人の決算に関する手続きには、大きく分けて、税務署等へ行う税務申告と、都道府県知事へ行う医療法上の届出があります。
税理士が作成した決算書などをもとに、医療法人の事業内容や役員、開設する医療機関の情報を確認し、行政提出用の事業報告書等を整えていきます。
そのため、税理士へ決算を依頼している場合でも、「医療法上の事業報告書等の届出まで含まれているか」を確認しておくことが大切です。
税務申告と行政への届出について、誰がどこまで担当するのかを事前に整理しておくことで、提出漏れを防ぐことができます。
医療法人は設立後の継続的な管理も大切です
医療法人には、毎年度の事業報告書等のほかにも、役員の変更、理事長の重任、登記事項の変更、定款の変更など、状況に応じた手続きが必要です。
特に役員には任期があるため、実際の役員構成に変更がない場合でも、重任に伴う届出や登記が必要となることがあります。
医療法人を安定して運営していくためには、決算期や役員の任期、定款の内容などを継続的に管理し、必要な手続きを適切な時期に行うことが重要です。
スピカ行政書士オフィスでは、医療法人の事業報告書等の作成・提出をはじめ、役員変更届や定款変更など、設立後の行政手続きについてもサポートいたします。
税務・登記・社会保険などについては、税理士、司法書士、社会保険労務士等の専門家と連携しながら対応いたします。
毎年度の届出や法人運営に関する手続きでお困りの場合は、お気軽にご相談ください。
※本記事は2026年8月現在の法令及び愛知県の公表資料に基づいて作成しています。手続き、提出方法、必要書類及び様式は変更される場合がありますので、実際の届出にあたっては、愛知県及び厚生労働省の最新情報をご確認ください。

