医療法人の定款変更が必要になるケース|認可・届出の違い

医療法人の定款には、法人の名称、目的、事務所の所在地、開設する病院・診療所、役員の定数、公告方法など、法人運営の基本となる事項が定められています。

そのため、分院の開設や診療所の移転・廃止、法人名の変更などを行う場合は、事業上の手続きだけでなく、医療法人の定款変更が必要になることがあります。

定款変更の手続きには、都道府県知事の「認可」が必要なものと、変更後の「届出」で足りるものがあります。

今回は、愛知県の医療法人を対象として、定款変更が必要になる主なケースと、認可・届出の違い、変更後の登記などについてご説明します。

※医療法人には社団医療法人と財団医療法人があり、法人の基本規則を定めた書類は、社団では「定款」、財団では「寄附行為」と呼ばれます。本記事では、一般的な社団医療法人を中心に「定款変更」と表記します。財団医療法人の場合は「寄附行為」と読み替えてください。

※本記事は、2026年9月7日時点の愛知県の公式情報に基づいて作成しています。

医療法人の定款変更は原則として認可が必要です

医療法人が定款を変更する場合は、原則として都道府県知事の認可を受けなければなりません。

医療法第54条の9では、社団医療法人が定款を変更するときは社員総会の決議が必要であり、一定の軽微な変更を除き、都道府県知事の認可を受けなければ変更の効力が生じないと定められています。

したがって、社員総会で定款変更を決議しただけでは、手続きが完了するわけではありません。

認可が必要な変更については、社員総会の決議を経たうえで定款変更認可申請を行い、認可を受けてから、その後の登記や病院・診療所に関する手続きを進める必要があります。

参考:e-Gov法令検索「医療法」

定款変更の認可が必要になる主なケース

愛知県では、次のような変更を行う場合、原則として事前に定款変更認可申請が必要です。

  • 病院や診療所を新たに開設するとき
  • 分院を開設するとき
  • 病院や診療所を移転するとき
  • 病院や診療所の名称を変更するとき
  • 病院や診療所を廃止するとき
  • 介護老人保健施設や介護医療院を開設・移転・変更・廃止するとき
  • 医療法に定められた附帯業務を追加するとき
  • 附帯業務を行う施設を開設・移転・変更・廃止するとき
  • 医療法人の名称を変更するとき
  • 医療法人の目的や事業内容を変更するとき
  • 理事や監事などの役員定数を変更するとき
  • その他、定款に記載された事項を変更するとき

特に、分院の開設や診療所の移転、附帯業務の追加などは、定款変更だけで完結するものではありません。

診療所の開設許可・届出、廃止届、保険医療機関の指定、介護保険事業者の指定など、変更内容に応じた別の手続きが必要になる可能性があります。

それぞれの手続きには順序があるため、開設日や移転日を決める前に、全体のスケジュールを整理することが大切です。

届出で足りる定款変更

愛知県では、次の変更のみを行う場合は、定款変更認可申請ではなく、定款変更届による手続きとなります。

  • 法人の事務所のみを移転するとき
  • 公告方法を変更するとき

認可が必要な変更は、認可を受けなければ効力が生じません。一方、届出で足りる変更については、法人内部で必要な手続きを行った後、遅滞なく愛知県へ届け出ます。

愛知県では、定款変更届を1部提出することとされており、押印は不要です。

ただし、「法人の事務所のみを移転する場合」であることに注意が必要です。

法人の事務所とともに病院や診療所も移転する場合は、単なる届出ではなく、事前の定款変更認可申請が必要になります。

参考:愛知県「医療法人の定款(寄附行為)変更の手続き」

役員の交代は定款変更とは別の手続きです

理事や監事が就任・退任・再任した場合、通常は「役員変更届」の手続きとなり、役員本人が交代するたびに定款を変更するわけではありません。

一方、定款に定めている役員の定数自体を変更する場合は、定款変更認可申請が必要になります。

例えば、定款に「理事3名以上5名以内」と定めている法人が、その定数を「理事3名以上7名以内」へ変更する場合などが該当します。

また、理事長の変更は登記事項にも関係するため、役員変更届に加えて、法務局での変更登記や、愛知県への登記完了届が必要になることがあります。

「役員が変わる場合」と「役員定数の規定を変える場合」では手続きが異なるため、区別して確認しましょう。

定款変更認可申請の主な流れ

定款変更認可申請は、一般的に次のような流れで進めます。

1.変更内容と現在の定款を確認する

まず、予定している事業や組織の変更が、現在の定款のどの条文に関係するのかを確認します。

併せて、定款変更認可申請、定款変更届、役員変更届、診療所の変更手続きなど、どの手続きが必要になるのかを整理します。

2.愛知県へ事前相談する

定款変更に必要な書類は、変更内容によって異なります。

特に、病院・診療所や附帯業務の開設・移転を伴う場合は、事業計画、収支予算、施設、賃貸借契約、職員体制などについても確認されます。

愛知県は、定款変更後に他機関で指定などの手続きが必要になる場合、事業開始のおおむね2か月前に相談するよう案内しています。

開設日や移転日から逆算し、早めに相談しておくことが大切です。

3.社員総会で定款変更を決議する

社団医療法人が定款を変更する場合は、定款の定めに従って社員総会を開催し、定款変更について決議します。

社員総会議事録には、変更の理由、変更する条文、議決結果などを正確に記載します。

財団医療法人が寄附行為を変更する場合は、あらかじめ評議員会の意見を聴く必要があります。

4.定款変更認可申請書を提出する

愛知県では、定款変更認可申請書と添付書類を2部提出します。押印は不要です。

一般的な提出書類には、次のようなものがあります。

  • 定款変更認可申請書
  • 定款変更の内容を記載した書類
  • 変更理由書
  • 新旧条文対照表
  • 社員総会議事録の写し
  • 現行定款の写し
  • 変更後の定款案
  • 担当者名と電話番号が分かる書類

病院・診療所や附帯業務の開設・移転を伴う場合は、さらに次のような書類が必要になることがあります。

  • 病院・診療所または附帯業務の概要
  • 土地・建物の登記事項証明書
  • 平面図、敷地図、周辺図
  • 賃貸借契約書
  • 建築確認済証
  • 変更後2年間の事業計画書
  • 収支予算書
  • 職員給与費内訳書
  • 予想貸借対照表

必要書類は変更内容や法人の状況によって異なるため、個別に確認する必要があります。

5.認可後に関連手続きを進める

定款変更の認可後は、変更内容に応じて次のような手続きを進めます。

  • 法務局での変更登記
  • 愛知県への登記事項変更登記完了届
  • 病院・診療所の開設許可申請や変更届
  • 移転前の診療所に関する廃止届
  • 保険医療機関の指定に関する手続き
  • 介護保険事業者の指定・変更手続き
  • 税務署、年金事務所、金融機関などへの届出

定款変更の認可を受けても、これらの手続きが自動的に完了するわけではありません。

どの機関へ、どの順番で手続きを行うのかを、あらかじめ整理しておくことが重要です。

審査期間だけでスケジュールを判断しないようにしましょう

愛知県は、書類の補正が一切ない場合、定款変更認可申請の審査に要する期間をおおむね2週間と案内しています。

ただし、書類の不足や内容の確認によって補正が必要になることも少なくありません。

また、診療所の開設や移転を伴う場合は、定款変更のほかにも、保健所、厚生局、法務局、介護保険担当部署などで手続きが必要になる可能性があります。

そのため、「審査期間が2週間だから、2週間前に申請すればよい」と考えるのではなく、事業開始の時期から逆算して余裕を持って準備することが大切です。

変更登記と登記完了届も確認します

定款変更の内容が登記事項に関係する場合は、法務局で変更登記を行います。

主な登記事項には、次のようなものがあります。

  • 医療法人の名称
  • 目的および業務
  • 主たる事務所の所在地
  • 理事長の氏名および住所
  • その他の法定登記事項

登記事項に変更が生じた場合は、原則として変更が生じた日から2週間以内に、主たる事務所の所在地で変更登記を行う必要があります。

登記が完了した後は、愛知県へ「登記事項変更登記完了届」を提出します。愛知県では、届出書に履歴事項全部証明書の写しを添付し、1部提出することとされています。

変更登記の申請代理は司法書士の業務となるため、必要に応じて早めに司法書士と連携して準備します。

参考:愛知県「医療法人の登記事項変更登記完了届」

よくある注意点

認可前に新しい事業を始めない

認可が必要な定款変更については、認可を受けなければ変更の効力が生じません。

分院の開設や附帯業務の開始などを予定している場合も、先に事業を始めることはできません。

賃貸借契約や工事の時期を確認する

診療所の開設・移転では、賃貸借契約書、建物の登記事項証明書、平面図、建築確認済証などが必要になることがあります。

物件の契約や工事を進める前に、定款変更認可申請や診療所開設手続きとの関係を確認することが大切です。

社員総会議事録と申請書の内容を一致させる

社員総会議事録、新旧条文対照表、変更後の定款案、事業計画書などの内容に食い違いがあると、補正が必要になる可能性があります。

名称、所在地、事業内容、決議日、事業開始予定日などを統一して記載しましょう。

定款変更以外の手続きを見落とさない

役員変更、管理者変更、診療科目の変更などは、定款変更とは別の届出になる場合があります。

予定している変更を一つずつ確認し、関係する手続きを漏れなく整理する必要があります。

まとめ

医療法人の定款変更は、変更内容によって「認可」が必要な場合と、「届出」で足りる場合に分かれます。

愛知県では、法人の事務所のみの移転と公告方法の変更については届出となりますが、病院・診療所や附帯業務の開設・移転・名称変更・廃止、役員定数の変更などは、原則として事前の定款変更認可が必要です。

また、定款変更後に変更登記、診療所の開設・変更手続き、保険医療機関の指定などが必要になる場合もあります。

変更する事項だけを見るのではなく、社員総会の決議から認可申請、登記、各行政機関への届出までを一つの流れとして整理することが大切です。

スピカ行政書士オフィスでは、愛知県の医療法人に関する定款変更認可申請・定款変更届について、現在の定款と変更内容の確認、必要な手続きの整理、新旧条文対照表、社員総会議事録、申請書類の作成・提出をサポートしております。

変更登記が必要な場合は司法書士と連携し、診療所の開設・移転などを伴う場合は、関連する行政手続きも含めてスケジュールを整理いたします。

分院の開設、診療所の移転・廃止、附帯業務の追加などをご検討の段階から、どうぞお気軽にご相談ください。

※本記事は一般的な制度をご案内するものです。医療法人の定款、法人形態、変更内容、施設の所在地などによって、必要な手続きや書類が異なります。実際の手続きでは、最新の公式情報をご確認ください。

参考:

愛知県「医療法人の定款(寄附行為)変更の手続き」

愛知県「医療法人に関する手続きについて」

愛知県「医療法人の登記事項変更登記完了届」

e-Gov法令検索「医療法」

e-Gov法令検索「組合等登記令」

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