NPO法人は設立後が大切|事業報告書・運営体制・契約書の整備

NPO法人は、所轄庁から設立の認証を受け、法務局で設立登記を行うことによって成立します。

しかし、NPO法人の運営は、法人を設立したところで終わるものではありません。

設立後は、毎事業年度の事業報告書等の作成・提出、社員総会の開催、会計処理、役員変更や定款変更など、継続して行わなければならない手続きがあります。

また、活動に関わる人が増えるにつれて、理事や職員、ボランティアなどの役割分担を明確にし、業務委託、施設利用、寄付、協賛などに関する契約関係を整えることも重要になります。

今回は、NPO法人の設立後に必要となる手続きと、安心して活動を続けるための運営体制・契約書の整備についてご説明します。

毎事業年度終了後に事業報告書等を提出します

NPO法人は、毎事業年度終了後3か月以内に、前事業年度の事業報告書等を所轄庁へ提出しなければなりません。

3月31日を事業年度の末日としている法人であれば、原則として6月30日までに提出することになります。

提出する主な書類は、次のとおりです。

・事業報告書等提出書
・事業報告書
・活動計算書
・貸借対照表
・財産目録
・年間役員名簿
・前事業年度末日における社員のうち10人以上の所を置く場合は、原則として愛知県が所轄庁となります。

実際に提出する際は、法人の所轄庁と最新の様式を確認することが大切です。

活動実績がない場合も提出が必要です

設立後、まだ本格的に活動を開始していない場合や、収入・支出がほとんどなかった場合でも、事業報告書等の提出が不要になるわけではありません。

活動実績がなかったことや収支がなかったことを、事業報告書や計算書類に適切に記載して提出します。

「活動していないから提出しなくてもよい」と判断しないよう注意が必要です。

設立初年度は事業年度が短い場合もあります。設立登記が完了した段階で、最初の事業年度の終了日と提出期限を確認しておくと安心です。

事業報告書等は法人の活動を伝える書類です

NPO法人が提出した事業報告書等は、所轄庁において閲覧・公表の対象となります。

事業報告書は、単に行政へ提出するための書類ではありません。法人がどのような目的で、どのような活動を行い、どのように資金を使ったのかを、会員、寄付者、支援者、行政、地域住民などへ伝える役割があります。

事業報告書を作成する際には、定款に定めた事業と実際の活動内容が一致しているかを確認します。

活動計算書、貸借対照表、財産目録についても、それぞれの数値が整合しているかを確認する必要があります。

補助金や助成金、寄付金などを受けている場合は、それぞれの資金の使途や報告期限も併せて管理することが大切です。

貸借対照表の公告も忘れずに行います

NPO法人は、毎事業年度の終了後、貸借対照表を作成するだけでなく、定款に定めた方法によって公告する必要があります。

公告方法には、法人のホームページへの掲載、内閣府NPO法人ポータルサイトへの掲載、官報への掲載などがあり、法人の定款によって異なります。

ホームページへの掲載を公告方法としている場合は、事業報告書等を所轄庁へ提出しただけで終わらず、ホームページへの掲載まで行う必要があります。

まずは現在の定款を確認し、どの方法で貸借対照表を公告することになっているかを把握しておきましょう。

毎年1回、通常社員総会を開催します

NPO法人は、少なくとも毎年1回、通常社員総会を開催する必要があります。

社員総会では、定款の定めに従って、前年度の事業報告や決算の承認、当年度の事業計画や予算、役員の選任などについて審議します。

社員総会を開催する際は、次の事項を確認します。

・招集の方法と通知期限
・定足数
・議決に必要な賛成数
・議決権の取扱い
・書面表決や表決委任の可否
・議事録署名人に関する定め

社員総会終了後は、開催日時、場所、出席者数、審議事項、議決結果などを記載した議事録を作成します。

理事会を置く法人では、定款に従って理事会を開催し、その議事録も適切に作成・保管します。

役員変更や定款変更にも手続きが必要です

NPO法人の運営中に、理事や監事の就任・退任・再任、氏名や住所の変更などがあった場合は、所轄庁への役員変更等届出が必要になることがあります。

代表権を有する理事に変更があった場合は、法務局での変更登記も確認しなければなりません。

また、次のような変更を行う場合は、定款変更の手続きが必要になる可能性があります。

・法人の名称を変更するとき
・目的や活動分野を変更するとき
・事業の種類を追加または削除するとき
・事務所の所在地を変更するとき
・社員の資格や会費に関する規定を変更するとき
・役員の定数や任期を変更するとき
・公告方法を変更するとき

変更内容によって、所轄庁の認証が必要な場合と、届出で足りる場合があります。

定款変更の内容が登記事項にも関係する場合は、認証や届出とは別に変更登記が必要です。変更を決定する前に、必要な社員総会の議決、所轄庁への手続き、登記の有無を整理しておくことが大切です。

設立後の運営体制を整えることも大切です

NPO法人の活動が始まると、行政手続だけでなく、日々の運営に関するさまざまな判断が必要になります。

設立時には少人数で意思疎通ができていても、職員、ボランティア、協力者、支援者などが増えるにつれて、誰が何を決定し、誰が実行するのかが分かりにくくなることがあります。

設立後は、例えば次のような事項を整理しておくと安心です。

・理事長、理事、監事の役割
・社員総会と理事会の権限
・契約や支出を承認する者
・現金、預金、寄付金などの管理方法
・請求書や領収書の保管方法
・個人情報や相談記録の管理方法
・職員やボランティアへの情報共有
・事故や苦情が発生した場合の報告体制
・法人名義の印鑑、通帳、各種アカウントの管理

一人の代表者だけに業務や情報が集中すると、その方が不在になったときに法人運営が止まってしまう可能性があります。

役割と権限を明確にし、記録を残しながら複数人で確認できる体制を整えることが、活動を長く続けるための基盤になります。

活動内容に応じた契約書を整備しましょう

NPO法人は、営利を目的としない法人ですが、活動の中で契約を結ぶ場面は数多くあります。

例えば、次のような契約や合意書が考えられます。

・業務委託契約書
・ボランティア活動に関する合意書
・施設や物品の使用に関する契約書
・共同事業や連携事業に関する協定書
・寄付や協賛に関する確認書
・秘密保持契約書
・個人情報の取扱いに関する同意書
・法人の活動内容に応じた利用規約や同意書

口頭だけで活動を進めると、報酬や費用負担、責任の範囲、個人情報の取扱い、事故が発生した場合の対応などについて、後から認識の違いが生じることがあります。

特に、ボランティアと有償スタッフの区別、交通費・立替金・謝礼の取扱い、成果物の著作権、活動中の事故や損害への対応などは、事前に整理しておきたい事項です。

契約書や合意書は、相手を疑うためのものではありません。お互いの役割や約束を確認し、安心して活動するための共通ルールとして作成するものです。

なお、職員を雇用する場合の労働条件や社会保険などについては、必要に応じて社会保険労務士などの専門家へ相談します。

法人独自のルールも文書にしておきましょう

定款は法人運営の基本的なルールですが、日常の細かな運用まですべて定款に記載するわけではありません。

活動内容や組織の規模に応じて、次のような規程・マニュアルを整備することも考えられます。

・会員に関する規程
・会費に関する規程
・経理規程
・旅費・交通費規程
・寄付金取扱規程
・個人情報保護規程
・文書管理規程
・印章管理規程
・利益相反に関する規程
・ボランティア活動規程
・事故・苦情対応マニュアル

最初からすべての規程を作成する必要はありません。

法人の活動内容、関係者の人数、取り扱う金銭や個人情報、想定されるリスクを確認し、必要性の高いものから整備していく方法が現実的です。

設立時から設立後の運営を見据えることが大切です

NPO法人を設立するときは、認証を受けることや登記を完了することに意識が向きがちです。

しかし、実際の活動を円滑に進めるためには、設立後の業務の流れ、役割分担、資金管理、契約関係、毎年の手続きまで考えておく必要があります。

例えば、設立前から次の事項を整理しておくと、活動開始後の負担を減らすことができます。

・誰が日常的な運営を担当するのか
・誰が行政手続や期限を管理するのか
・寄付金や会費をどのように管理するのか
・会計や税務を誰に依頼するのか
・どのような契約書や同意書が必要になるのか
・相談や個人情報をどのように管理するのか
・ホームページやSNSを誰が運用するのか

法人の設立と設立後の運営を切り離さず、一つの流れとして検討することが大切です。

まとめ

NPO法人は、設立登記が完了した後も、毎事業年度の事業報告書等の提出、貸借対照表の公告、社員総会の開催、役員変更や定款変更など、継続的な管理が必要です。

また、法人の活動を安定して続けるためには、行政手続だけでなく、役割分担や意思決定の方法、会計・個人情報の管理、契約書や各種規程の整備も重要になります。

スピカ行政書士オフィスでは、NPO法人の設立認証申請だけでなく、設立後の事業報告書、役員変更、定款変更、社員総会議事録、契約書、各種規程などの作成・提出をサポートしております。

また、インアライメントと連携し、設立後の運営を見据えた事業内容の整理、役割分担、運営体制づくりについてもご相談いただけます。

法人設立をゴールとするのではなく、皆様の活動が安心して続いていくよう、必要に応じて中小企業診断士、司法書士、税理士、社会保険労務士などの専門家とも連携しながら支援いたします。

NPO法人の設立をご検討中の方も、すでに活動を始めており運営上のお悩みをお持ちの方も、どうぞお気軽にご相談ください。

※本記事は一般的な制度と運営上のポイントをご案内するものです。法人の所在地、定款、活動内容などによって、必要な手続きや提出先が異なる場合があります。

参考:
あいちNPO交流プラザ「NPO法人設立後の管理運営・手続き」
名古屋市市民活動推進センター「NPO法人を管理・運営する」
内閣府NPOホームページ「事業報告書等」
内閣府NPOホームページ「役員等」

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