医療法人が分院の物件を契約する前に確認したいこと|契約名義・図面・行政手続き

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医療法人が分院を開設するとき、立地や広さ、賃料、患者さまの通いやすさなどを検討しながら、物件を探すことになります。

希望に合う物件が見つかると、早く契約して内装工事を進めたいと考えるかもしれません。

しかし、医療法人による分院開設では、一般的な事務所や店舗を借りる場合とは異なり、定款変更、診療所の開設許可、開設後の届出など、複数の行政手続きが関係します。

契約名義や物件の構造、図面の内容が手続きと合っていなければ、契約後に修正や追加対応が必要になる可能性もあります。

今回は、医療法人が分院の物件を契約する前に確認しておきたい、契約名義、図面、定款変更、開設許可などのポイントをご説明します。

※本記事では診療所の分院開設を中心にご説明します。病院、有床診療所、特殊な設備を設置する診療所などでは、追加の手続きが必要になる場合があります。

物件を決める前から行政手続きを確認しましょう

医療法人が新たに診療所を開設する場合、物件を契約して内装工事を行い、完成後に保健所へ届け出ればよいわけではありません。

医療法人の定款には、法人が開設する病院や診療所などを定める必要があります。

現在の定款に新しい分院が記載されていない場合には、原則として、所管する都道府県等へ定款変更認可申請を行います。

さらに、法人が診療所を開設する場合には、医師または歯科医師が個人で開設する場合とは異なり、原則として診療所の開設許可が必要です。

そのため、物件を検討する段階から、主に次の点を確認しておくことが大切です。

  • 現在の定款に分院を追加する必要があるか
  • 分院の所在地や名称はどのように定めるか
  • 物件の契約名義は誰にするか
  • 診療所として使用できる物件か
  • 計画している間取りや設備で開設手続きを進められるか
  • 定款変更、登記、開設許可をどの順序で進めるか
  • 希望する開院日までに必要な手続きが完了するか

良い物件を見つけてから手続きを考えるのではなく、物件選定と行政手続きを並行して進めることが重要です。

賃貸借契約の借主は医療法人になっているか

分院の土地や建物を賃借する場合には、賃貸借契約の名義を確認します。

医療法人が診療所を開設するのであれば、原則として、開設者となる医療法人が土地・建物を使用できる関係が明確になっている必要があります。

例えば名古屋市では、法人が診療所の開設許可を申請する際、土地または建物を賃借している場合には、開設者本人が借りていることを確認できる賃貸借契約書が必要とされています。

理事長個人や開設予定の管理者個人が借主となっていると、法人がその物件を使用する根拠について、契約の変更や追加書類を求められる可能性があります。

物件を契約する前に、少なくとも次の事項を確認しましょう。

  • 借主が医療法人になっているか
  • 法人の名称や所在地が正確に記載されているか
  • 診療所として使用することが契約上認められているか
  • 転貸や名義変更に関する制限がないか
  • 内装工事や医療機器の設置が認められているか
  • 看板や外部表示に関する制限がないか
  • 契約期間が事業計画と合っているか

物件所有者、不動産会社、内装業者に「医療法人が診療所を開設する物件であること」を早い段階で共有しておくと、名義や使用目的の行き違いを防ぎやすくなります。

理事長個人が所有する物件を法人が使用する場合

理事長や理事、そのご家族などが所有する土地・建物を、医療法人が分院として使用するケースもあります。

この場合には、法人がその物件を使用する法的な根拠を明確にするため、賃貸借契約書または使用貸借契約書などを整備します。

また、理事が自己または第三者のために医療法人と取引を行う場合には、利益相反取引に該当する可能性があります。

契約条件だけでなく、理事会での承認や報告、議事録の作成など、法人内部の手続きについても確認が必要です。

賃料を設定する場合には、税務上の判断が関係することもあります。契約書や法人内部の手続きは行政書士、登記は司法書士、賃料や税務上の取扱いは税理士など、それぞれの専門家と連携して整理します。

図面を確定する前に保健所へ相談します

診療所の開設許可申請では、施設付近の見取図、敷地の平面図、建物の平面図、診療所の配置図などを提出します。

名古屋市では、建築検討図面を作成する段階で、事前に相談するよう案内されています。

内装工事が完了してから相談した結果、構造や設備について修正が必要になると、追加工事や開院日の延期につながる可能性があります。

図面を検討する際には、例えば次のような点を整理します。

  • 診察室、処置室、待合室などの配置
  • 患者さまとスタッフの動線
  • 各室の用途や面積
  • 給排水、換気、採光などの設備
  • 医薬品、医療器具、廃棄物などの保管場所
  • X線診療室や医療機器の設置場所
  • 病床の有無
  • バリアフリーや消防関係の確認事項

必要な構造や設備は、医科・歯科の別、診療内容、病床の有無、使用する医療機器などによって異なります。

設計士や内装業者だけで判断せず、図面を確定する前に、管轄の保健所等へ相談しておくことが大切です。

X線装置を設置する場合は早めに計画します

医科・歯科の診療所では、CT、一般撮影装置、パノラマX線装置などを設置することがあります。

X線装置を設置する場合には、通常の開設手続きとは別に、X線装置に関する届出や、遮へい計算書などの資料が必要になることがあります。

X線診療室は、装置を置く場所だけでなく、壁や扉の構造、周囲の部屋の用途なども関係します。

内装工事が進んでから設置場所を変更すると、図面、工事、設備業者の工程に影響する可能性があります。

導入する装置が決まっていない段階でも、X線設備を設置する予定があることを設計士、医療機器業者、行政手続きの担当者へ共有しておきましょう。

定款変更認可申請の資料と物件関係書類をそろえます

愛知県で、医療法人が新たな病院・診療所を開設するために定款を変更する場合、定款変更認可申請書のほか、変更理由、新旧条文対照表、社員総会議事録、開設する施設の概要、事業計画書、予算書などの提出が案内されています。

変更内容によっては、土地・建物に関する書類、賃貸借契約書、平面図、建築関係書類なども必要になります。

これらの書類の内容が一致しているかも重要です。

例えば、次のような不一致があると、確認や補正が必要になる可能性があります。

  • 定款案と賃貸借契約書で診療所の所在地が異なる
  • 契約書の借主が医療法人ではなく理事長個人になっている
  • 定款案、事業計画書、開設許可申請書で診療所の名称が異なる
  • 図面上の施設構成と開設許可申請の内容が合っていない
  • 工事契約や医療機器の契約名義が統一されていない

住所表記、診療所名、契約名義などは、申請書を作成する段階になってから修正するのではなく、契約前から統一しておくと手続きを進めやすくなります。

「契約前に許可を取る」という意味ではありません

物件契約前の確認が重要だからといって、必ず診療所の開設許可を受けてから賃貸借契約を締結する、という意味ではありません。

開設許可申請や定款変更認可申請では、物件を使用できることを示す契約書などが必要になる場合があるため、行政手続きより先に一定の契約を行うケースもあります。

大切なのは、契約と行政手続きを別々に考えないことです。

物件を契約する前に行政へ相談し、必要となる書類や手続きの順序を確認したうえで、契約時期を決めます。

必要に応じて、契約の効力発生時期、行政手続きが進まなかった場合の取扱い、内装工事を開始できる時期などについて、不動産会社や物件所有者、契約書の専門家と協議することも考えられます。

補助金を利用する場合は契約・発注時期にも注意します

分院開設では、内装工事、医療機器、予約・受付システム、電子カルテなどに多額の費用がかかることがあります。

設備投資に補助金を利用する場合は、物件や医療法上の手続きだけでなく、補助金の申請スケジュールも確認しなければなりません。

補助金制度によっては、交付決定前に契約・発注した設備やサービスが補助対象外になることがあります。

一方で、開院予定日から逆算すると、一定の時期までに設備を発注しなければ納品が間に合わない場合もあります。

そのため、次の工程を一つのスケジュールとして整理します。

  • 定款変更認可申請
  • 必要な変更登記
  • 診療所の開設許可申請
  • 建築・内装工事
  • 医療機器の契約・発注・納品
  • X線装置等の届出
  • 診療所の開設届
  • 保険医療機関の指定申請
  • 補助金の申請・交付決定・実績報告

行政手続き、建築、設備導入、補助金を別々に進めるのではなく、開院日から逆算した全体工程を作ることが大切です。

物件契約前の確認事項

分院候補の物件が見つかったら、契約前に次の事項を確認しましょう。

  • 医療法人の定款に分院を追加する必要があるか
  • 医療法人が借主または使用者となっているか
  • 診療所として使用できる契約内容になっているか
  • 希望する診療内容に必要な広さや構造があるか
  • 図面について保健所等へ事前相談を行ったか
  • X線装置や大型医療機器の設置場所を検討したか
  • 定款、契約書、図面で所在地や施設名が一致しているか
  • 開院予定日から行政手続きの期間を逆算したか
  • 補助金を利用する場合の契約・発注時期を確認したか
  • 登記、税務、労務などを担当する専門家を整理したか

すべてを確定してから相談する必要はありません。

物件がまだ決まっていない段階でも、候補地や開院希望時期など、分かる範囲の情報から必要な手続きを整理できます。

まとめ

医療法人が分院を開設する場合、物件の立地や賃料だけでなく、契約名義、使用目的、図面、定款変更、診療所の開設許可などを一体的に確認する必要があります。

特に、次の点が重要です。

  • 開設者となる医療法人の名義で物件を使用できるようにする
  • 内装図面を確定する前に行政へ相談する
  • 定款、契約書、図面、事業計画の内容を一致させる
  • 定款変更から開院までの工程を逆算する
  • 補助金を利用する場合は契約・発注時期を確認する

スピカ行政書士オフィスでは、医科・歯科の医療法人について、分院開設に伴う定款変更認可、診療所の開設許可・届出、X線装置等の届出、開院までのスケジュール整理をサポートしております。

登記、税務、労務などが関係する場合には、司法書士、税理士、社会保険労務士などの専門家と連携して進めます。

また、設備投資や補助金の利用を検討されている場合には、中小企業診断士との共創ブランド「IN ALIGNMENT(インアライメント)」として、事業計画、資金計画、設備導入、行政手続きを一つの流れに整理することも可能です。

「まだ候補物件を探している段階」

「契約書の名義がこれでよいか分からない」

「設計や建築は進んでいるけれど、行政手続きを確認していない」

という段階からでも、どうぞお気軽にご相談ください。

※医療法人・医療機関に関する手続きや必要書類は、法人の定款、所在地、施設の構造、診療内容、設備等によって異なります。実際の契約・工事・申請にあたっては、管轄行政庁、保健所等へ事前にご確認ください。

参考:

愛知県「医療法人の定款(寄附行為)変更の手続き」

愛知県「医療法人の登記事項変更登記完了届」

名古屋市「診療所開設許可申請」


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