
医療法人を運営している中で、
「もう一つクリニックを開設したい」
「別の地域に分院を出したい」
「歯科医院の2院目を開院したい」
と考えることがあります。
医療法人が新たに分院を開設する場合、物件を決めて内装工事を行い、保健所へ届け出れば終わり、というわけではありません。
医療法人の定款変更、必要な登記、診療所の開設許可、開設後の届出、さらに保険診療を行う場合には保険医療機関の指定など、複数の手続きを順番に進めていく必要があります。
愛知県でも、医療法人が本来業務として新たな病院・診療所を追加する場合、分院の開設などを含め、定款または寄附行為の変更が必要とされています。
この記事では、医療法人が分院を開設するときの基本的な流れと、あらかじめ確認しておきたいポイントについてご説明します。
1.まずは現在の定款を確認します
医療法人が開設・運営する病院や診療所は、定款または寄附行為に定める必要があります。
そのため、新たに分院を開設する場合には、まず現在の定款を確認し、新しく開設する医療機関を法人の事業として追加する手続きが必要かを確認します。
愛知県では、病院・診療所の新規開設や移転などを行う場合、原則として事前に定款変更認可申請を行うこととされています。
社団医療法人の場合には、定款の定めに従って社員総会で変更について決議するなど、法人内部での手続きも必要です。
「分院の建物が完成してから手続きを始める」のではなく、開院予定日から逆算して準備を始めることが重要です。
2.定款変更認可申請を行います
定款変更が必要な場合には、所管する都道府県等へ定款変更認可申請を行います。
愛知県で病院・診療所を新たに開設する場合の提出書類の例としては、定款変更認可申請書のほか、
変更内容・変更理由、新旧条文対照表、社員総会議事録、現在の定款、変更後の定款案、開設する医療機関の概要、土地・建物関係の資料、平面図、事業計画書、予算関係書類などが挙げられています。
賃貸物件の場合には賃貸借契約書、建築中の場合には建築確認済証などが求められる場合もあります。必要書類は変更内容や自治体によって異なります。
そのため、物件契約や建築計画を進める段階から、医療法人としての手続きと整合しているかを確認しておくことが大切です。
3.定款変更後は登記についても確認します
定款変更の認可を受けた後、法人の登記事項に変更が生じる場合には、変更登記が必要になります。
愛知県では、医療法人の事業の新規実施・移転・廃止などについて変更登記を行った場合、登記完了後に「登記事項変更登記完了届」を提出する手続きが案内されています。
ここで注意したいのが、一般に「分院」と呼んでいる医療機関と、法人登記上の「従たる事務所」が必ずしも同じ意味ではないことです。
分院開設に伴って、どのような登記が必要になるのか、また従たる事務所としての登記が必要なのかについては、法人の定款や実際の運営体制を確認して判断します。
なお、登記申請の代理は司法書士の業務となりますので、行政手続きと登記手続きを連携させながら進めることが大切です。
4.診療所の「開設許可」が必要です
医療法人などの法人が診療所を開設する場合には、医師・歯科医師個人が診療所を開設する場合とは手続きが異なります。
例えば名古屋市では、法人が診療所を開設する場合、開設前に診療所開設許可を受ける必要があります。
さらに、名古屋市は建築検討図面を作成する段階で事前相談を行うよう案内しています。
開設許可申請では、施設の平面図や配置図、定款等のほか、土地・建物を賃借する場合には、開設者である法人が借主であることを確認できる賃貸借契約書などが必要になります。
そのため、土地・建物の契約名義についても、早い段階で確認しておく必要があります。
5.開設した後にも届出があります
診療所の開設許可を受け、実際に診療所を開設した後にも手続きがあります。
名古屋市の場合、法人が診療所を開設したときは、開設後10日以内に診療所開設届を提出する必要があります。
また、X線装置等を設置する場合には、別途「X線装置等設置届」が必要になります。
病床を有する診療所では、施設使用許可など、さらに別の手続きが必要となる場合もあります。
開設する医療機関の種類や設備によって必要な手続きが異なるため、事前の確認が重要です。
6.保険診療を行う場合は「保険医療機関の指定」も
新しい分院で保険診療を行う場合には、医療法上の開設手続きとは別に、地方厚生局への保険医療機関の指定申請も必要です。
東海北陸厚生局では、保険医療機関の指定申請を行う前に、保健所等への開設手続きを行い、必要な許可等を受ける流れが案内されています。
また、2026年現在、オンライン資格確認に関する手続きなども含め、指定希望日より前から準備が必要となっています。
「開院日は決まったけれど、保険医療機関の指定が間に合わない」ということがないよう、こちらも開院予定日から逆算して準備しておくことが大切です。
7.歯科医院の分院開設では、設備とのスケジュール調整も重要です
歯科医院の分院開設では、診療所そのものの手続きに加えて、
CTなどのX線設備、歯科用チェア、口腔内スキャナー、マイクロスコープなど、さまざまな医療機器の導入を並行して進めることがあります。
特にCTなどのX線装置を設置する場合には、医療法上の届出も関係します。
また、設備投資に補助金を利用する場合には、補助金の申請・採択・交付決定・契約・発注・納品などの時期と、分院の建築・開設スケジュールを合わせて考える必要があります。
分院開設の行政手続きと補助金申請を別々に進めるのではなく、全体の工程を一つのスケジュールとして整理しておくと安心です。
8.分院開設は「開院日から逆算」して準備を
医療法人の分院開設では、
定款変更 → 登記 → 診療所開設手続き → 保険医療機関指定 → 開院
と、複数の行政手続きが関係します。
実際には、建築・内装・設備導入などと並行して進める手続きもあるため、すべてを単純に一つずつ順番に行うわけではありません。
愛知県も、定款変更後に他機関で指定等の手続きが必要となる場合には、事業開始のおおむね2か月前を目安に相談するよう案内しています。
ただし、これはあくまで行政への相談時期の一つの目安です。建築や設備導入を伴う分院開設では、それよりも早い段階から全体のスケジュールを整理しておくことをおすすめします。
医療法人の分院開設をご検討の先生へ
スピカ行政書士オフィスでは、医科・歯科の医療法人について、
定款変更認可、診療所の開設に関する行政手続き、開院までのスケジュール整理などのご相談を承っております。
登記が必要となる場合には司法書士など他士業とも連携しながら、開院までに必要となる手続きを整理して進めてまいります。
「まだ分院の場所を検討している段階」
「建築計画は進んでいるけれど、行政手続きが分からない」
「補助金も含めて設備投資を考えたい」
という段階からでもご相談いただけます。
新しい医療の場をつくる先生方の想いを、形に。
どうぞお気軽にスピカ行政書士オフィスへご相談ください。
※医療法人・医療機関に関する手続き、必要書類、審査の流れ等は所在地や施設の内容によって異なります。実際の手続きにあたっては、管轄行政庁・保健所等への確認が必要です。

